スミマサノリ「月曜日にオジャマシマス」

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いつかは飲食店をやってみたい。これは男の3大やりたいことの1つだと思う。あとの2つが何かは分からないが、飲食店経営はかなり魅力的である。で、飲食 店だったらどんなお店がいいだろう? 蕎屋、小料理屋、喫茶店……、選択肢は沢山ある。中でも最近人気が高いのは、鉄板焼き屋さんじゃないだろうか。大き な鉄板があって、客の目の前で肉や魚を焼いてみせる。華麗なヘラさばきでエビを解体したり、肉を豪快に焼いてみたり。これからお店を始めるなら鉄板焼きが 狙い目だろう。

しかし、人と同じことをやってもダメだ。自分の店にしか出せない味とか、変わったサービスとか、何かしらユニークな特徴が必要だ。ナンバーワンにはなれなくても、オンリーワンであれば息の長い商売が出来そうだ。

そこで、あるアイデアを思いついた。
ずばり、アイロン焼きである。

鉄板の代わりにアイロンを使って、肉や魚を焼いていくのだ。カウンターの中に粋の良い職人さんが並んでいて、全員がアイロンを持っている。注文が入るとアイロンに電源を入れて食材を焼いていく。一見「あれ?クリーニング屋さん?」と勘違いされそうであるが、出て来るのはパリッと糊がきいたYシャツではなく、おいしく焼き上がった肉なのだ。店名は「アイロンじゅうじゅう」あたりでどうだろう。

いけるかもしれない。

善は急げである。
早速、試してみた。



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【食材とアイロンを調達】

アイロン料理を試すため、スーパーに食材の買い付けに行った。肉系と魚系、それぞれ焼いてみてうまくいったらビジネス化を検討しよう。

まずは、お肉売り場でおいしそうな肉を選ぶ。


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慎重に食材を選ぶ

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牛肉を検討

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実験なので高価な肉は避ける

もしうまくいってお店を出すことになれば、本格的に食材の仕入れをしないといけない。そうなってきたらどこに行けばいいのか? 市場だろうか? 

その辺りのことが全く分からない。
店を出す場所も重要だ。

「アイロンじゅうじゅう」を立ち上げるには、いくつものハードルがありそうだ。まだ検証すら行っていないのに、気ばかりが焦る。

とりあえず出来ることからやるしかない。

食材の調達が終わったので、次に今回の主役、アイロンを買うために電気店に向かった。渋谷の大型電気店、LABIである。


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一番高いアイロン

LABIのアイロン売り場で一番高かったのが、このアイロンであった。ワイヤレスタイプで19800円。実際にお店で使うことになれば、ワイヤレスタイプは確かに便利かもしれない。職人さんの動きもダイナミックになりそうだ。アイロンを上に飛ばしてクルッと回転してキャッチ、肉を焼く。そんなアクロバティックな焼き方も出来る。

ビジネス化が見えた段階でワイヤレスタイプを購入することにして、今回はLABIで一番安いアイロンを買うことにした。1480円である。


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一番右が一番安いアイロン

食材とアイロンで2500円ほどかかってしまったが、これが成功すればきっと安い投資となるだろう。

はやる気持ちをグッと抑えつつ、事務所で検証を始める。


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このアイロンから伝説が生まれる


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【検証、アイロン料理】

アイロンで肉や魚を焼くためには台が必要だ。鉄板的な台の上に食材を置き、その上からアイロンをかけていくのがいいだろう。しかし、大きい鉄板の持ち合わせがないので、フライパンを使用することにした。

が、ここで1つの誤算が発覚した。


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フライパンに入りきらない

手持ちの中で一番大きいフライパンでも、アイロンが入り切らないのだ。フライパンの鉄板にアイロンが届かない。


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浮いてる

これでは肉や魚を焼くことが出来ない。

早くも暗礁に乗り上げてしまうのか?

いや、乗り上げない。

フライパンの使用は諦めて、新たな作戦に出た。
そば打ち用の板があったので、その上にアルミホイルを敷くのだ。


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即席鉄板

即席ではあるが、これで鉄板の用意が整った。
あとは焼くだけである。

最初に牛肉の切り落としを焼いていく。国内産黒毛和牛の切り落とし肉を使う。


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黒毛和牛をアイロンで焼く

このおいしそうな黒毛和牛をアイロンで焼くことは出来るのか?


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アイロンの温度は最高に設定

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即席鉄板に油を引く

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肉を見繕って

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即席鉄板の上に並べる

アイロンの熱を確認すると、既に熱々になっている。Yシャツのしわだったら余裕で伸びるくらいの温度である。

これならいける。

念のためアイロンにも油を塗って、いよいよ黒毛和牛を焼いていく。

お店のユニフォームを想定して作務衣も着た。


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アイロンの温度オッケー

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アイロンにも油を塗って

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いざ

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じゅう〜

アイロンパワーは予想以上だった。

じゅう〜、と良い音が鳴り響き、部屋中に肉が焼ける匂いが充満した。
完全に焼き肉状態になっている。

これはいける。


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どんどん焼けていく

一度肉を裏返して、両面を均等に焼いていった。時間にして片面1分弱、たったそれだけで完全に肉が焼き上がった。


あとは味である。
おいしく焼き上がっているのか?

スーパーで買っておいたエバラ焼き肉のタレを小皿に入れて、焼き上がった黒毛和牛を試食してみる。


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エバラ焼き肉のタレで

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焼き上がった肉を

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試食

旨い。普通に旨い。

アイロンで伸ばしたこともあって、肉がピシッとしているような気がする。

黒毛和牛の切り落としは成功した。
次に、ボリュームのある肉を焼いてみよう。

ハンバーグだ。

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ハンバーグも焼いてみる

先ほどと同じ要領で、ハンバーグのアイロン焼きに挑戦する。
スーパーで買った「手造りハンバーグ」をアイロンで潰すようにして焼くのだ。仕上がりのイメージはハンバーガーの中の肉である。


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ハンバーグをアイロンで

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じゅう〜

今回も約1分ほどで片面に焼き色がついた。
一度ハンバーグを裏返して、逆側も焼いていく。


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焼き色がついた

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裏面も焼く

焼き肉の時よりも強めに上から圧力をかけると、ハンバーグからおいしそうな肉汁が溢れ出てくる。


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溢れ出る肉汁

それぞれの面に焼き色を付けた後も引続きアイロンで焼いていく。
中が生の状態だとお腹を壊してしまうからだ。

都合5分ほど、アイロンを押し続けた結果、ほぼイメージ通りにハンバーガーの中の肉が出来上がった。


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焼き上がり

完璧である。
これをバンズで挟んだら、どこから見ても立派なハンバーガーだ。

味はどうだろう?


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ケチャップとマスタードをつけて

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試食

これまた旨い。ハンバーガーの中の肉、そのものだ。

焼き肉とハンバーガー、アイロン料理の検証は極めて順調にきている。お店を出す場所の検討に入った方がいいかもしれない。

いや、まだダメだ。
魚介類も試さないといけない。

肉を好まないお客様のためにも、魚介類の用意をしておく必要がある。

肉と魚介がケンカしないように、即席鉄板の上に新しいアルミホイルを敷く。


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新しいアルミホイルを敷く

試す魚介類は、イカだ。

アイロンでイカを焼くことは出来るのだろうか?


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モロッコ産の紋甲イカを

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アイロンで焼く

イカにアイロンを押し付けた途端、イカの焼ける匂いが立ち上った。部屋中が夏祭りのようになっている。

1分ほどしてからアイロンを離したら、イカが反っていた。


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反るイカ

かなり良い感じである。

ここでトドメに醤油を垂らすことにした。醤油を垂らした瞬間にアイロンを当てることで、香ばしい風味を閉じ込める作戦だ。


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醤油を垂らして更に焼く

焼き上がったイカに七味をまぶしたマヨネーズを添える。


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アイロン焼きイカの完成

味は?


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試食

文句のつけようがない。完全なイカ焼きが出来上がっている。


今からすぐにお店の場所を探し始めないと間に合わない。



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アイロン料理は予想以上に上手くいった。アイロンで肉を焼いたりイカを焼いたり出来る訳だ。

しかし、1つだけ問題がある。


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焦げる

アイロンが焦げてしまうのだ。テフロン製のアイロンだったら焦げないのかもしれない。次の段階ではその辺りを検証したいが、そういうアイロンは高そうなので二の足を踏んでいる。

とりあえず、今回の検証に使ったアイロンには「料理用」とマジックで書いておいた。誰かが間違ってYシャツにこのアイロンをかけたら大変である。イカとか肉の匂いがYシャツにしみ込んでしまう。


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料理用のアイロンとして今後も使用

※アイロンは調理器具ではありません。決してマネをしないでください。


(2009/7/20 住正徳)

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