スミマサノリ「月曜日にオジャマシマス」

tit.gif


学生時代、クラスに1人は風船ガムを膨らますのが上手い奴がいた。僕のクラスでは原君だ。顔が隠れるくらい大きな風船を作っていた記憶がある。僕は舌が器 用じゃないので大きく膨らませることが出来なかった。別に悔しくはなかったが、大きな風船を作れる方がなんとなく「イケてる」ような雰囲気はあった。

そして、大人になった僕は考えた。

風船ガムを大きく膨らまして、更にそれを飛ばす事が出来たら…、相当イケてると思う。空に浮かぶ風船ガム。なんてロマンティックなんだろう。

風船ガムを飛ばしたい。
そんな願いを叶えるため、大人の叡智をしぼってみました。



line.gif


【ヘリウムガスとバブリシャスガム】

風船ガムを飛ばすために、東急ハンズでヘリウムガスを調達することにした。普通の風船はヘリウムガスで膨らませれば、フワッと浮く。風船ガムだって浮くはずだ。


0001.jpg
東急ハンズで調達

ハンズには大きなタンクタイプと小さいスプレータイプの2種類のヘリウムガスがあった。タンクタイプとスプレータイプでは、ヘリウムの圧力が違うらしい。タンクタイプは圧力が強く、逆にスプレータイプは圧力が弱い。タンクタイプならゴム風船を浮かす事が出来て、スプレータイプはアルミ風船専用だ。

大きい方か小さい方か。

「舌きり雀」のおじいさんは小さい方のつづらを選んで成功している。ヘリウムガスも小さい方を選んだ方が無難だろうか?


0002.jpg
タンクタイプとスプレータイプ

店員さんが通ったので相談してみた。

「風船ガムを飛ばすには、どっちがいいですかね?」

店員さんは一瞬フリーズしてからすぐに困った表情をした。風船ガムですか……、としばらく考えてから、

「圧力的にはスプレータイプでしょうか」

と答えてくれた。風船ガムは強度が弱そうなのでスプレータイプで充分らしい。やはりつづらもヘリウムガスも小さい方が吉なのだ。

「ただ、飛ばすのは相当難しいと思いますよ」

と、申し訳なさそうに付け加えた店員さんの言葉が気になりつつ、ハンズからの帰り道、コンビニでバブリシャスガムを購入した。


0003.jpg
バブリシャスグレープ味 7粒入りが3つ

スプレータイプのヘリウムガスとバブリシャスガム。これで風船ガムを飛ばす準備は整った。

あとはガムを噛んでヘリウムガスを注入するだけだ。
まずは3粒まとめて噛んでみることにした。


0004.jpg
3粒

0005.jpg
まとめて

0006.jpg
噛む

バブリシャス3粒は中々噛みごたえがある。20代の頃、顎関節症になったことがあるので少し心配だ。これをキッカケに再発、なんてこともあり得る。顎を気遣いながら、風船が出来る固さになるまで噛んでいく。


0007.jpg
風船が出来る固さで

ガムが丁度良い固さになったら口から出して伸ばしてみる。結構な強度がある。
これならしっかりと膨らみそうだ。

スプレータイプのヘリウムガス「ヘリカンくん」を用意する。


0008.jpg
ヘリカンくん

ヘリカン君の寿命は10秒間である。10秒間噴射するとヘリウムガスがなくなってしまう。1本840円なので1秒あたり84円である。ヘリウムガスは高いのだ。大事に使わないといけない。

ヘリカンくんのノズルにガムをくっつけた。


0009.jpg
ガムをくっつける

ヘリカンくんのボタンを押すとプシューっと勢い良くヘリウムガスが噴射された。約2秒、ヘリウムガスを入れた結果…、


0010.jpg
小さく膨らんで割れた

ガムの厚さが均等でなかったからだろう。下の方だけがプクッと膨れてすぐに割れてしまった。

2秒分、ガスをロスしてしまった。

新しいガムを今度は2粒口に入れて噛む。
いい固さになったら口から出して手で揉んでいく。


0011.jpg
セカンドトライ

0012.jpg
いい強度

さっきと同じ方法でやっても上手くいかない。セカンドトライでは新たな方法として、ストローを切り落としたものを用意した。ストローで一度膨らまして型を作ってからヘリウムガスを注入するのだ。


0013.jpg
ストロー作戦

0014.jpg
一度膨らましてから

0015.jpg
ヘリカンくんのノズルにセット

ガムのセット出来たらすかさずヘリカンくんのボタンを押す!
プシューっとヘリウムガスが風船ガムを膨らまして……、


0016.jpg
プスー

全く膨らまない。
ガムに穴が空いていたのだ。

ストロー作戦は3回トライしたが、結果は全て同じであった。

「ただ、飛ばすのは相当難しいと思いますよ」

ハンズの店員さんの言葉が頭の中で繰り返し聞こえている。飛ばすどころか膨らますことが出来ない。そして、手がベタベタだ。



line.gif


【ヘリウムガス、2本目】

ヘリカンくん1本を使い切り、ストロー作戦は断念した。バブリシャスガムも1本分使い切ってしまった。

ヘリウムガスとバブリシャスガム、それぞれ2本目に突入である。


0017.jpg
2本目

とにかくガムを均等な厚さで伸ばさないといけない。
均等に伸ばせたら隙間が空かないようにノズルにくっつける。

ガムを慎重にくっつけている姿は、まるでガラス>細工職人のようである。


0018.jpg
ガラス細工職人のように

穴が空いてないのを確認してから、ヘリウムガスを注入。


0019.jpg
ちょっと膨らんだ

均等に伸ばしたので均等に膨らんでくれたが、膨らみ具合は小さい。

いい方向に向かってる感じがするので、更に新しいガムを噛んで実験を続けていく。
この段階でバブリシャスガムを10粒以上噛んでいる。少し気持ちが悪くなってきた。


0020.jpg
気持ち悪い

ここで僕は新たな作戦を思いついた。

口の中である程度の固さにしてから、ガムに接着剤を混ぜて強度をアップさせるのだ。題して「ボンド作戦」である。


0021.jpg
ボンドで補強して

0022.jpg
手でこねる

ボンドを混ぜたことでかなり強度が上がったような気がする。
これならいけそうだ。

強くなったバブリシャスをノズルにくっつけてヘリウムガスを噴射する。


0023.jpg
均等に膨らみ始めて

0024.jpg
さっきよりも大きくなった

ボンド作戦が功を奏し、さっきよりも大きな風船が出来た。

しかし、フワッと浮くほどの大きさではない。
そして、ヘリカンくん2本目が終わってしまった。残るはあと1本である。

残り10秒分のヘリウムガスで、風船ガムを飛ばすことは出来るのか?



line.gif


【飛んでくれ、風船ガム】

0025.jpg
ヘリカンくん3本目

最後の1本も、引続きボンド作戦で挑む。更なる工夫として口の中でガムを噛まずに、最初から手でこねるという方法を編み出した。その方が更に強度が増すのだ。

最初からそうすれば良かった。この時点でバブリシャスガム14粒を噛んでいる。さっきまで少し気持ち悪かったが、今は相当気持ち悪い。

ヘリウムガスも僕の胸焼けも、そろそろ限界が近づいている。
今度こそ、飛んでくれないと困る。

頼む、飛んでくれ!


0026.jpg
いい感じで膨らみ始めるバブリシャス

0027.jpg
過去最高の大きさに

かなり大きな風船が出来た。
よし、ノズルから切り離して飛ばしてみよう。

頼む、飛んでくれ!


0028.jpg
ノズルから外すとみるみる小さくなる風船ガム

だめだどんどんヘリウムガスが抜けていく。
急いで飛ばさなければ。

しかし、


0029.jpg
ガムが手に

0030.jpg
くっつく

ダメだ。
ガムがくっついて離れないのだ。


0031.jpg
バカな夢を見たな

結局、ハンズの店員さんの言う通りであった。風船ガムを飛ばすのはかなり難しい。ヘリウムガス3本とバブリシャスガム14粒を使っても出来なかった。

風船ガムをフワッと浮かす。

そんな夢は見事に打ち砕かれ、ベタベタの手と胸焼けだけが残ったのでした。


(2009/05/11 住正徳)

この記事についてつぶやく


line.gif

【記事一覧へ戻る】