スミマサノリ「月曜日にオジャマシマス」

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ここ数年、僕の母は韓流にハマっている。韓流ドラマはほとんど見ているし、韓流スターが来日すればコンサートに足を運ぶ。実家のリビングも韓流スターのポスターやらカレンダーやらで埋め尽くされていて、それまで飾ってあった僕の子供の写真はどこかへ行ってしまった。韓流 > 孫。何かに夢中になるのはとてもいい事だとは思う。しかし、そこまでハマる意味が分からないのも正直なところだ。今回、「母の日特集」との連動コラムという事なので、母の趣味につき合ってみようと思う。母と一緒に新大久保に行くのだ。





【新宿の厚生年金会館で待ち合わせ】

約束の日、母は新宿の厚生年金会館でイ・ビョンホンさんのフィルムコンサートを観覧する予定が入っていた。昨年行われた日本ツアーの様子を90分にまとめたものらしい。母はそのツアーにも行っている。同じものを二回観て楽しいのか、と母に聞くと「楽しいに決まっている」と言われてしまった。ちなみに、母が一番好きな韓流スターは、イ・ビョンホンさんで二番目はクオン・サウさんである。韓流スターの事をほとんど知らない僕には、イ・ビョンホンさんがネプチューンの原田泰造さんに見えてしまうのだが、それを言うと母が怒るので言わないようにしている。

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待ち合わせ場所の厚生年金会館

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母は16時半からの回を観覧中

フィルムコンサートが18時に終わるというので、5分前から会場前で母を待つ。このフィルムコンサートは1日に3回上映されるらしく、次 の回を待つおばさまたちで会場付近は賑わっている。ここにいる人たち全員がイ・ビョンホンさんのファンなのだ。改めて韓流スターのパワーを思い知らされる。

18時になり、会場からドッと人が溢れ出て来た。やはりおばさまの姿が目立つが、中には若い女性の姿も見える。お母さんと一緒に来ているようだ。いずれにしても、圧倒的な女性率だ。というか、係の人と僕以外、男性がいない。困った状況である。

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会場からドッとお客さんが

中々母が出て来ないので、電飾がまぶしい階段を上り、人波に逆流して入口付近に向かった。すると、会場奥から満面の笑顔を浮かべて母が出て来た。そうとう楽しかったらしい。

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母登場

僕を見つけた母は「いやあ、良かったわぁ」と言って笑った。昨年のツアーの舞台裏を中心にまとめたフィルムだったらしく、また新しいイ・ビョンホンと出会えたわ、と興奮している。出会ったというか、母が一方的に観ただけでイ・ビョンホンと母は出会っていない。それでも母にとっては最高のひと時だったのだ。

そして、母は1人じゃなかった。昨年のツアーで知り合った韓流仲間と3人で観てたらしい。韓流を通じて、母の交友関係はグッと広がっているのだ。3人の中の1人がインターネットに詳しいらしく、ホットな情報を教えてくれるという。このフィルムコンサートのチケットもその人が手配してくれたのだ。僕の母はパソコンをいじれないので、その人の存在は重要である。

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母と韓流仲間

母の韓流友だちと挨拶を交わす。「いつも母がお世話になっております」と頭を下げながら、これではまるで僕が親みたいだな、と思った。これからも、ネットで探した最新情報を母に届けて下さい、とお願いして韓流友だちと別れた。

韓流友だちと別れると、母は会場で購入したイ・ビョンホングッズを僕に自慢し始めた。クリアファイル、生写真、キーホルダー。やっぱり原田泰造さんに見えてしまう。

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グッズを自慢する母

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裏側にイ・ビョンホンが印刷されている傘を開いて鑑賞会をしているグループ

厚生年金会館の前に停めておいた車に母を乗せ、新大久保に向かう。

新大久保で母に韓流スターグッズを買ってあげて、その後、韓国料理屋さんで一緒に夕食を食べる。それが、僕の母孝行のプランである。。

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新大久保へ





【新大久保でショッピング】

しかし、良く考えたら母はほとんどのグッズを持っているのかもしれない。さっきも会場で新しいグッズを仕入れたばかりである。韓流スターグッズのお店に行っても意味がないのでは? 心配になって母に確認してみた。

「グッズとか、もういらない?」
「何言ってるの、欲しい物はまだまだあるわよ」

心配は無用だった。

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新大久保の駅前に到着

どこにどんなお店があるのか僕には全く分からないので、ここからは母に任せる事にした。母がまず向かったのは、新大久保駅近くの「KOREA芸能人ひろば」というお店だった。ブロマイドやマグカップなど、あらゆる韓流スターグッズが所狭しと並ぶ人気店らしい。

僕がお店の看板を撮影している間に、母はとっとと店内で物色を始めていた。韓流>息子。韓流を前にすると他の事はどうでも良くなってしまうようだ。

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KOREA芸能人ひろば

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僕に構わず物色を始める母

入ってすぐの所にイ・ビョンホンさんのコーナーがあり、母は既にいくつかの商品を手に取っていた。イ・ビョンホンさんのパスポートケースと手帳、どっちがいいか悩んでいるようだった。

同じようなもの持ってるじゃん、と言いそうになって、これは僕が子供の頃に母から良く言われた台詞だと気付いた。仮面ライダーのグッズが欲しくて母にねだると、必ずそう言われたものだった。母にとっては仮面ライダーが印刷されていれば、どれも一緒に見えていたのだろう。今、その立場が完全に逆転している。パスポートケースと手帳、僕にとってはどっちも一緒だ。

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どっちがいいかしら(どっちでもいい)

結局、母はパスポートケースを選んだ。今度海外旅行に行く際、それにパスポートを入れるという。僕はよした方がいいと思うが、余計な事は言わないようにした。

一軒目の「KOREA芸能人ひろば」では、そのパスポートケースとイ・ビョンホンさんの時計を購入する事に決まった。時計は前から目をつけていた物らしい。

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これは絶対にいるわ

会計は僕の役目だ。パスポートケースと時計で4070円。高いのか安いのか良く分からない。母が持っていたスタンプカードに判子を2つ押してもらった。2000円でスタンプ1つ。HMVだったら1000円で1つ押してくれるのに。

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会計は僕が

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母はスタンプカードを持っていた

次に母が向かったのはCDとDVDのお店だった。韓流は音楽もまた素晴らしい。というのが、母の言い分だ。毎晩、韓流音楽を流しながら眠っているという。

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僕を置いて行く母

CDショップの中は撮影禁止だったので写真がないのだが、中にイ・ビョンホンさんの直筆サインが飾られていた。僕がそれを見つけて母にえると、あらそう、と素っ気ない返事が返ってきた。サインとかには興味がないらしい。

CDショップで母が選んだのは、ZEROというアーティストのアルバムだ。母は昨年末にZEROさんが登場したライブにも行っている。

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ZEROさんのアルバム購入

CDショップの次は、再び韓流スターグッズのお店である。最初のお店とそんなに品揃えが変わらないように見えるが、そうではないらしい。このお店にしかないグッズがあるという。

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3軒目へ

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ブロマイドを説明する母

日本人では駄目なのか? 常々疑問に思っていた事を母にぶつけてみた。例えばジャニーズとか、日本にだってイケメンは沢山いる。

「駄目なのよねぇ、何でか分からないけど」

というのが母の見解であった。何でか分からないけど韓流スターには日本のおばさま達を引きつける魅力がある。そういう事なのだ。

3軒目で母が手に取ったグッズは、イ・ビョンホンの写真集、イ・ビョンホンのペン立て、東方神起の写真集。

東方神起?
なんだその居酒屋みたいな名前は?

「若くてかわいい5人組よ」

日本でいうNEWSみたいなグループだろうか。母の説明だけでは良く分からない。


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飽きてきた





【ヨン様だらけの韓国料理屋さん】

3軒のショップを巡り、ようやく母は満足したようだった。後は韓国料理屋さんで食事である。何でもヨン様のポスターだらけのお店があるという。新大久保巡りの締めは、ヨン様である。

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ヨン様だらけの店内へ

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わくわくする母

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落ち着かない息子

多くの人たちがそうであったように、母も「冬のソナタ」をキッカケに韓流の世界にのめり込んでいった。なので、ヨン様の存在は特別なのだ。一通り店内を見回してから席に着く母。席に着くまでしばらくかかっている。そして、席に着くなりこの日の収穫をテーブルの上に並べ始めた。

まだ、何も注文していない。


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グッズを一つ一つ確認する母

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この日買ったグッズ

飲み物を注文するまで、10分以上かかってしまった。店員さんも苦笑いである。
それでも母がとても喜んでくれたので、僕も満足だ。

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ビールで乾杯

ビールを飲みながら韓国料理を堪能した。

久しぶりに会ったので色々と積もる話もあったはずなのに、母はずっと「冬のソナタ」のあらすじを僕に聞かせた。

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「冬のソナタ」の良さを熱弁する母

母が熱心にドラマの話をしている間、僕はずっと母の洋服が気になっていた。編み目のシースルーが網戸みたいなのだ。

この服はどこで買ったんだろう?

韓流の話に飽きてしまっていたので、後半はずっとそんな事を考えていた。


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網戸みたいな服


(2008/4/21 住正徳)

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