スミマサノリ「月曜日にオジャマシマス」

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子供の頃、アイスキャンディーにあった「あたりバー」。あの「あたり」という字が見えた時の感動といったら相当なものだった。もう1本もらえる、ってだけなのに何であんなに嬉しかったんだろう。きっと僕のクジ運のせいだ。僕は子供の頃からことごとくクジ運が悪い。アイスのあたりバーも人生の中で2回くらいしか出ていないと思う。だから、その2回の「あたり」が強烈な印象として残っているのだ。あの時の感動は今でも忘れない。

あの喜びをもう一度味わってみたい。でも、クジ運が悪い事に変わりはないので、普通に買って「あたりバー」が出る可能性は低い。そもそも、今でも「あたりバー」付きのアイスがあるのかどうか分からない。だったら自分で作ってしまえばいい。「あたり」アイスを。





【焼印で「あたり」と刻みたいが…】

「あたりバー」は焼印で「あたり」と刻まれていた。なにせ人生において2回しか見ていないので記憶が曖昧ではあるが、確か焼印だった。今回、自分で「あた りバー」を作る訳なので、やはり焼印で「あたり」と刻みたい。「あたり」と刻まれた焼印を手に入れる必要がある。どこに売ってるんだろう?

そういう時は東急ハンズだ。ハンズなら「あたり」の焼印があるに違いない。
店員さんに聞いてみた。

「あたり、っていう焼印ありますか?」

よし、焼印はあきらめよう。

ハンズの判子コーナーで「あたり」という判子を探す事にした。油性インキで「あたり」と判を押せばいいのだ。

別の丁寧な店員さんが「おなまえスタンプ」という物を持って来てくれた。「あたり」というピンポイントな判子はないが、「おなまえスタンプ」なら好きに文字を組む事が出来るらしい。

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おなまえスタンプ(1029円)

小学生向けのスタンプなので、用意されている文字はすべて平仮名だ。僕が必要な文字は「あたり」なので、平仮名で問題ない。さらに「あ・た・り」の3文字だけがあれば充分なのだが、「おなまえスタンプ」は切り売りしていない。他の文字に用はないが、セットで購入した。

次に、ハンズのキッチンコーナーでアイスキャンディー用の木製スティックを手に入れた。50本入りで304円。あたりアイスが50本も作れる。

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木製キャンディースティック(304円)

これで「あたりバー」作りの準備は整った。
早速作る。

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必要な文字を切り取って

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スタンプホルダーに文字をはめ込む

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あ・た

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あ・た・り!

「あ・た・り」とはめ込みが終了したら、スタンプパッドに油性インキをたらす。この時、インキボトルのやわらかい部分を強く持つとインキが飛び散る恐れがあるので、注意が必要だ。

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インキをスタンプ台にたらす

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あ…

しつこいようだが、インキボトルのやわらかい部分にはくれぐれも注意してもらいたい。油性インキなので中々落ちないのだ。

スタンプパッドにインキが染みたら、おなまえスタンプを数回押し当ててインキをつけ、木製スティックに押す。

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押す

すると、あっという間に「あたりバー」の完成である。
人生の中で2回しか出会った事のない、あの「あたりバー」が今、僕の手中にある。

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あたりバー完成

どんどんスティックに押して、「あたりバー」を量産していく。

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あたりバーがいっぱい

みんなが幸せになれる「あたりバー」がどんどん出来ていく。この作業がとても楽しい。僕が作っているのはただの「あたりバー」ではない。「あたりバー」と いう名の「幸せ」なのだ。アイス工場で「あたりバー」に焼印を押している人もきっと同じ気持ちに違いない。手作業かどうか分からないけど。

「あたりバー」が出来上がったら、次はアイスの素を用意しないといけない。果汁ジュースを凍らせてもいいが、せっかくなのでアーバンなアイスにしたい。アーバンとい えば、スタバだ。

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スタバでアイスの素を買う

バニラクリームフラペチーノ(ホイップ抜き)のグランデサイズを買った。フラペチーノを選んだのは、すでに半分凍っているからだ。短時間でアイスになる事が見込まれる。早く「あたりアイス」を食べたいという気持ちと、既に原稿の締め切りを過ぎているという事情もある。

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アイスキャンディの型

アイスキャンディの型にバニラクリームフラペチーノを流し込む。甘い香りがキッチンに充満する。おいしいアイスが出来上がるに違いない。

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バニラクリームフラペチーノを

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流し込む

一個だけ抹茶フラペチーノが混ざっているが、それは、バニラが足りなかったからだ。抹茶フラペチーノだっておいしいに決まっている。

そして、このアイスたちを全て「あたり」にしていく。
そう、「あたりバー」を差し込むのだ。

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全部あたりバー

あたりバーを差し込んだら、冷凍庫に入れて凍らせる。

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凍らせよう





【あたりアイス完成】

出来上がるまで、何回も冷凍庫を開けて固まり具合を確認した。何度も開けたことで固まる時間が余計にかかったかもしれない。子供の頃もそうだった。母親がアイスを作ってくれると、固まるまでに何度も冷凍庫を開けて叱られた。

そんなこんなで、待望の「あたりアイス」が完成した。
早速食べてみよう。

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絶対「あたり」のアイスを食べる

食べ進めて行くと徐々に「あたり」の文字が見えてくる。これだ。この感覚だ。

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あたり!

当たった!
……。

正直に言おう。「あたり」と文字が出て来ても、それほど嬉しくないのだ。それは当たる事が最初から分かっているからだろうか。それとも、当たっても何の得もないからだろうか。

これだけ時間をかけて作ったのに、なんだこの感じ。

せっかくなので、他のあたりアイスも食べちゃおう。

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お!あ・た

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あたま

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また、あ・た

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あたご(東京都港区の地名)

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今度こそ、あ・た・り

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め! あたりめ(珍味)

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アタッシュケース(鞄)

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あ・い?

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あいしてる(告白の言葉)

全部「あたり」だとつまらないと思い、他のバーを仕込んでおいたのだ。 手作りアイスで愛の告白。ロマンチックですよね。


(2008/4/7 住正徳)

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